1 マニュアルの目的 

 このマニュアルは、「ペットがいるから」と避難をあきらめるのではなく、「ペットがいても」安心して避難できる選択肢を増やすことを目指し特定非営利活動法人 全国動物避難所協会(以下:当協会とする)がペット同伴避難及び、ペット一時預かりに必要な避難所の設置・運営基準を定めたマニュアルです。

2 マニュアルの適用範囲 

 このマニュアルは、当協会が作成している全国動物避難所マップ(うちトコ避難所マップ*¹)に掲載されている全国民間動物避難所(以下:うちトコ動物避難所*¹)に適応されます。

 

 このマニュアルは、民間動物避難所の設置・運営においての必要事項を、分かりやすくまとめたものです。

 各民間動物避難所の設置者や運営者は、このマニュアルに示す基準に基づいて、それぞれの地域(場所) や、ペットの特性に応じて設置・運営が行われていくことを目指すものと位置づけます。

 

 また災害時は、現場に応じて動くことのできるリーダーシップを持った設置者や運営者になって頂くためのマニュアルと位置づけます。

 

ここで示すリーダーシップとは、その時の「最善」を選択できることと定義し

 

①各うちトコ動物避難所がある場所のハザードマップや被害想定などのリスクを把握できる

②リスクを把握することで、各事業所における「目標や行動指針や災害対策計画」を立てることができる

③装備を揃え、必要な知識や技術を身に着け、早期復旧を目指し運営していくことができる

④災害時は、ひともペットと一緒に「命を守る行動」を第一優先とし、その後現況把握や、安全の確認、避難行動を起こすなど、現場に応じて判断し動くことや、指揮をとることができる

 

以上の4点を兼ね備えた災害時の支援人材になって頂くことも含まれます。

 

 これらをサポートするための内容は、地域性や災害が起こった時期、時間などで、異なってしまいすべてをお示しすることは叶いません。だからこそ「じぶんごと」にして頂き、地域に根付いた「ひととペットの防災・減災」を各うちトコ避難所において目指してくださいますようお願い申し上げます。

 

*1「うちの子(ペット)と一緒にトコトコ行こう動物避難所」という意味を持つ「うちトコ動物避難所」は、全国民間動物避難所の愛称であり、その全国動物避難所をマップ化したものの愛称を「うちトコ避難所マップ」と呼び、より皆様にとって身近なものにして頂きたい願いを込めそう呼称している。

3 マニュアル作成に当たって(運用に当たって)考慮している事項 

(1) 避難を望んだひと及びペットに、不安を煽ることのない、可能な限り安心できる民間動物避難所の運営を目指して下さい。

(2) 出来るだけ不便のない生活が送れるように避難所を設置・運営を目指して下さい。人道支援(災害時のひとの支援)の基準として、スフィア ハンドブックに準拠します。ペットの最低限の生活環境基準としては、 環境省_動物愛護管理法 [動物の愛護と適切な管理] (env.go.jp)に準拠します。うちトコ動物避難所の基準や用語の定義、規定等は、 動物避難所ガイドライン をご参照下さい。

 

参照:翻訳.岡野谷純他.人道支援の必須基準.Humanitarian Quality Assurance Initiative

発行元:CHS アライアンス、グループURD、スフィア・プロジェクト 初版:2014

 

  1. ひととペットのニーズに合っており、適切な支援が実施されている。
  2. ひととペットにとって効果的でタイムリーな支援が実施されている。
  3. ひととペットを含めた地域の対応力や復旧を強化し、マイナスの影響を未然に防いでいる。
  4. ひととペットに合わせたコミュニケーション、参加、現場の人の声に基づいて運営されている。
  5. ひととペットの要望やクレームを受け入れ、ひとつずつ対応している。
  6. ひととペットの支援は、調節、相互補完がなされている。
  7. ひととペットの支援者は、継続的な学習と改善がなされている。
  8. スタッフは、効率的な業務が行えるよう、スタッフ自身もサポートを受け、適正かつ公平な扱いを受けている。
  9. ひととペット両方の資源が、効果的、効率的、倫理的に、目的を持って管理・活用されている。

 

(3) 災害の発生が懸念される段階においてや、避難勧告が発令されていない段階においても、ペットとの在宅避難に不安を持つ方や、身の周りの危険を感じた方を受け入れる準備は、平時から整えておくようにしましょう。

 

 ペットは、家族の一員ではありますが、避難所では社会の一部となります。うちトコ動物避難所では、ペットが苦手な方や動物アレルギーの方がお越しになることは、少ないと考えますが、お越しにならない訳ではありません。そして近隣の方との連携は必要不可欠です。みなで協力して災害を乗り越えるためには、避難所において適切に飼養管理できる体制を整備しておく必要性は、平時と変わりません。またしつけや日頃の健康管理、予防対策も同様です。

 当協会でも、避難所に関わる方々と飼い主、ペットの命を守りつつ、迅速に復旧復興することを目標としており、人命や周囲の公衆衛生を優先とした対策となります。それらが整備されますことは、ペットに関わっておられない方々等の社会全体の健康保持や精神的安寧にもつながるものと考えます。

                             令和4年6月  特定非営利活動法人 全国動物避難所協会